杉田(椙田)です、
先日、りそな銀行が長年やってきたアパートローンを大幅に縮小するという情報が入って きました。但し、現在進行形で融資審査をしてもらっている投資家の友人や、これからも ウェルカムと言っている支店もあるようで、まだまだ情報は錯綜しています。
【りそな銀行アパートローン撤退について】
2014年以降、不動産投資への融資を積極的に行なってきた #りそな銀行 が今月いっぱいでアパートローンを終了させます。今後は資産家と地主向けのみ不動産融資するそうです😢
資産家に飛び付きたいもんです。資産家はもっと違う銀行と付き合いそうだけど。 pic.twitter.com/Jp0LFZIchh
— 杉田卓哉(椙田拓也) (@sugita_takuya) October 1, 2019
これは調べる限り正式発表ではなく、複数の不動産投資家や不動産業者から回ってきた情 報をもとに銀行担当者に裏取りした内容です。
いずれにしても言えることは以前よりは確実に、りそな銀行から融資を受けるのは難しい 状況になってきているようです(もっともこれはりそな銀行だけに限った話ではありませ んが)
この原因は、金融庁からの締め付けのほか、一時期に流行った『多法人スキーム』による 不動産業者や不動産投資家の強硬した融資手段への対策もあるものと思われます。
これまで多法人スキームを活用していた投資家をターゲットに粛清を加えていたりそな銀 行ですが、ついに一般の投資家も含めて「不動産投資への融資をしない」ことで不正やリ スクを水際で防ごうという方針になったようです。
多法人スキームとは?何が問題だったのか
多法人スキームは、複数法人スキームとか1銀行1法人スキームとも言われ、その名の通 り『複数の法人名義で不動産を購入する』手法のこと。 もちろん法人を複数つくることや法人名義で物件を購入することは一般の企業でも当たり 前に行われていますし、法律上は問題もありません。 では、多法人スキームの何が問題だったのでしょうか。
多法人スキームで物件は確かに買えた
多法人スキームで物件を買う際に「銀行に多額の借入があるのを見せないようにする」ことが可能でした。融資を受けるたびに新設法人を設立し、故意に他行の借入を見えなくし ていたんですね。このことから見えない法人のことを「隠し法人」などとも呼んでいまし た。
なぜ、自分の他の不動産所有法人(での借入)を見せないようにするのか?ですが、これ は各金融機関が、不動産投資家に融資をする場合、既存の多額の債務があると審査が通り にくくなってしまうからです。
大まかなイメージで敢えて言うと、1銀行あたり1億円を超えたり、年収の10倍を超えて くると、審査が厳しくなってしまう・・という現実がありました(地域により例外もあり、 例えば関西などでは1信金で何十億と貸付けてくれるケースもあるようです)。
そこで、投資家や斡旋業者は既存借り入れがなるべく少ないように見せる工夫を強いられたのです。
しかしながらスルガ銀行や西武信金が不正融資問題で金融庁から業務停止命令を受けたように、このようなグレーな手法での融資に、いま各金融機関とも非常にナーバスになって います。
りそな銀行でも以前から個別に、多法人スキームが発覚した顧客に対して利上げ交渉や一 括返済の要請が行われていましたが、このような背景からいよいよ不動産投資のアパートローン自体を大幅に縮小させる、という結論に至ったようです。
りそな銀行が多法人スキームに鉄槌を下している
多法人スキームを使ってりそな銀行から多額の融資を引いたと思われる投資家には、次々 に個別の連絡がされています。 私の周りの投資家にも担当者から連絡がありましたし、Twitter上でも噂になっています。
りそ○BKが多法人スキームな人捲って一括返済チラつかせながら利上げ交渉してるっていう噂を聞いたり聞かなかったり。養殖エビじゃないなら預金移せとの噂も。金利2%近く上がったら別物。
— 関田タカシ (@takashi_sekita) September 15, 2018
多法人スキームで融資を引いた物件のリスク
多法人スキームで物件の融資を引いた場合、その場ではバレなくとも登記情報を調べれば 簡単に借入の紐づきをたどることが出来ます。
りそな銀行に限らず、三井住友銀行やその他の地銀なども今、この問題には神経質になっており、トップダウンで現場を調査させて いる金融機関も多いです。更に、りそな銀行にいたっては特殊な解析ツールを開発し、徹底的に多法人スキームの疑いのある融資案件を洗っているとのことです。
多法人スキームを使って融資実行の際に他の借入があることを隠していたとしたら、期限 の利益の喪失事由に該当するとして、銀行から一括返済や利上げをいつ求められてもおか しくありません(ただし実際に「期限の利益の喪失事由」に該当するか否かは議論のある ところですし、個別の背景にもよりますので一概には言えません)。
しかし、もしも何億という借入の一括返済を求められる場合、弁済できるキャッシュを持っ ていなかったり、もしくはすぐに売却するなどができないと、債務者たる投資家はいとも 簡単に破産に追い込まれます。
またりそな銀行の場合、多法人スキームで買っていたことがめくれた債務者に対して、金 利を6%程度に引き上げる措置(制裁?)をとっており、ギリギリのキャッシュフローで 組んでいた場合、金利が大きく上昇すれば持ち出しが出て返済が苦しくなる可能性も高いです。
多法人スキームで拡大した投資家のほとんどが『破綻』する?
ただ、今回の件で私が問題だと思うのは、そういう「業者」でも、「スキーム」そのもの でもなく、一気に数十億円の規模まで拡大させメガ大家に飛びつこうとして、買ってはい けない儲からない物件を買い増ししたことじゃないかと思います。
私も物件はウォッチしてて、年に買ってもいいかなと思う物件がそんな何十億も入ってこ ないのに、素人のサラリーマン大家がなぜ何十億も買えるのか?という点は疑問に思いま す。
それは、プロ投資家などが手を出さないような物件でも買うからにほかなりません。それ は勇気ではなく無謀。金利が2%でも上昇したら破綻、入居者が2割でもいっぺんに退居し たら破綻、という破綻予備軍が量産されたことが問題なんですね。 それゆえ、銀行も格付けを問題視して冷たい対応に踵を返したのだろうと思います。
多法人スキームで物件を購入してしまった人はどうすれば良い?
多法人スキームで購入した物件を通常の方法で売却するのは、現実的に今の融資状況だと かなり厳しいと思います。りそな銀行だけでなく、その他の金融機関が不動産投資への融 資実行に対して消極的なためです。
実際に『りそな銀行から利上げ交渉をされてしまった!多法人スキームで買った物件売却 したいがどうすれば良いでしょうか?』という相談が私にも多く寄せられています。
このような相談に対し、私がいつも提案しているのが『不動産所有法人の株式譲渡』です。
多法人スキームの出口戦略は『不動産所有法人の株式譲渡』で売り抜ける
多法人スキームは、法人で物件を購入するスキームです。当然所有者は個人ではなく法人 なので、法人株を売却(M&A)することで物件の所有者を変えることなく、オーナー変更 することができます。
この手法については前の記事でも買主目線で触れていました。
法人の不動産M&Aが今アツい!銀行から不動産投資で融資を引く方法【2019年最新】
多法人スキームの売却相談が入った時、この手法を提案しています。
今はM&A仲介のプロにアドバイザーとして動いてもらいながら『不動産所有法人の株式譲 渡』の処理案件をいくつも引き受けています。
なぜ不動産M&Aであれば銀行から融資を得ることが可能なのか
多法人スキームで購入した物件はどれも高額な融資を引いているケースが多く、通常の売 却方法では銀行の融資が伸びず、物件価格の大幅な指値が入ってしまいます。
一方、不動産M&Aであれば銀行の不動産融資枠とは別の予算から融資を得ることができ るので、融資の厳しい現状でも不動産を売却することが可能です。また、今回のような「銀行からのペナルティとしての売却」でない、自主的な出口戦略の一環としての法人売却の場合は、既存の融資をそのまま次の所有者へ引き継ぐことも可能です。
多法人スキームを利用した投資家の方にはこの不動産M&Aを利用して、多法人スキームで 購入した物件を法人ごと、出来るだけ高く売却するように動き、一括返済や利上げのリス クを回避することをおすすめしています。
『不動産所有法人の株式譲渡』は誰に頼めばよい?
不動産所有法人の株式譲渡の方法は、不動産の売買とは大きく異なります。当然、銀行に 提出すべき資料、売却相談先となる不動産M&A業者、適切な売却時期など、検討すべき課 題も多くあります。
しかし、特殊な売却方法のためM&Aの知識は必要不可欠。専門の優良業者は見つからな い方が多いでしょう。
私には『不動産』と『M&A』の両方の知識があるので、噂を聞いた 投資家の方々の『駆け込み寺』のような状況にもなってきてました。
『不動産所有法人の株式譲渡』のメリット
現物の不動産売却の場合は、売却した法人の売上となり譲渡益に対して課税されます。そして今度は法人の資金を株主個人に移転しようとした場合にはまた税金がかかってしまい ます。
しかし法人ごとの売却の場合だと、利益はダイレクトに個人の、それも不動産売却による 譲渡益ではなく、「株式の譲渡所得」に対する課税となるため税率も20.315%(内訳は所得税20%+住民税5%+復興特別税0.315%)と安い税率で済みます。
また、取得者の方も、不動産そのものを購入するわけではないので、通常現物売買時にか かる「不動産取得税」や「登録免許税」は一切かからず、単に株主と代表者と場合により 連帯保証人がそれぞれ変更されるだけ、というシンプルな取引になるためコストは安くなります。
多法人スキームの物件は手放してしまった方が良い?
多法人スキームの物件は銀行が導入したツールによって「ほぼ全てバレている」とも言われています。
これを読まれている方はお気づきだと思いますが、このような状況で物件を 所有し続けることはリスク以外の何物でもありません。
もしも、
- 「○○銀行から一括返済を求められた。」
- 「所有している法人の詳細を詳しくヒヤリングされた」
- 「利上げされてしまい、CFがマイナスになってしまった」
このような状況であるのなら、ぜひ一度ご相談を下さい。 多少の手出しになる可能性があっても、数億~数十億の返済リスクを手放すことを優先す べきです。売り抜けることが出来れば、破綻しない限り投資家としてまだまだやり直せるからです。
一般的な不動産仲介会社ではM&A知識が無く、売却対応が出来ないと思われます。
この記事を読んだ方の中に多法人スキームで物件を買ってしまいお困りの方、不動産業者に言われて法人で買った方など、自身の状況がわからずご不安な方はお問い合わせ頂ければ幸いです。
お問い合わせは、杉田のLINE@にお願いします。
https://line.me/R/ti/p/%40kaf7097l