杉田(椙田)です、
不動産投資家から人気の高かった西武信金で不正融資に加え、反社会勢力と繋がっていることが判明し、落合理事長が辞任という結果に。投資家からは復帰を望む声が大きかっただけに、反社会勢力とのつながりは非常に残念な報道でした。
今回の行政処分の背景、西武信金の問題点について解説していきます。
西武信金が行政処分を受けた背景
2018年スルガ銀行の不正融資問題の一件以降、金融庁は地域金融機関の実態調査を進めていました。その過程で西武信金の不正融資が発覚することになります。
さらに金融庁は不正融資の調査を進める中で、西武信金が反社会勢力と認識したうえで融資を続けていた痕跡を発見し、二つの不正の観点から今回の処分に至ってしまったんですね。
西武信金が受けた行政処分
この二つの不正により、西武信金が受けた行政処分は下記の3つです。
ⅰ本処分を踏まえた責任の所在の明確化と内部統制の強化
ⅱ融資審査管理を含む信用リスク管理態勢の強化
ⅲ反社会的勢力等の排除に向けた管理態勢の抜本的な見直し
引用:関東財務局
http://kantou.mof.go.jp/rizai/pagekthp027000005.html
この処分を受けて西武信金トップの落合理事長が辞任。またその他不正融資・反社会勢力に関わった行員の洗い出しが開始される見込みです。
西武信金はどのような信用金庫なのか?
森・前金融長官から「信金の雄」と絶賛されていた西武信金は、基本理念に人が経営の原点という「人間主義」を掲げ、苦しい昨今の銀行業界において大きく成長している企業でした。
18年3月期には前年同期比2148億円増(14.8%増)と業界1位の伸び率をたたき出した目覚ましい躍進ぶりです。
しかしこの躍進の背景は「収益不動産の融資」によって培われたもの。今回の不正融資の発覚、さらには反社会勢力との関係によって、その信用は地に落ちてしまいました。
不動産投資家には人気の金融機関だった
西武信金では「経済的耐用年数の融資スキーム」という、物件の収益性に着目する実質的な融資スキームを展開していました。
経済的耐用年数による評価方法で、他行で融資のつかなかった物件にも融資がつきやすいと不動産投資家からは重宝されていたんですね。
- 経済的耐用年数:物件の収益性での年数評価
- 法定耐用年数:木造(22年)、鉄骨(34年)、鉄筋(47年)などの構造によって定められた年数評価
今回の西武信金の失墜によって、投資家にとっては融資に積極的だった数少ない金融機関の選択肢を失ってしまう結果となってしまいました。
過去の記事でもこの点については触れています。
西武信金は危ない金融機関だったのか?
今回の問題で西武信金の評判は地に落ちてしまい、前述の「経済的耐用年数」の評価方法も
「法定耐用年数を守っていない、悪質な評価だ!」
と一部報道がされてしまいました。
しかし、実はこの法定耐用年数は「減価償却資産が利用に耐える年数」を指しており、建物の老朽化を示すものではありません。また、仮に新築マンションであっても、環境調査が甘く、空室に悩む建物は存在します。
西武信金は「実際の建物の収益性に則した」融資判断が出来ていた。ということですね。
報道の一環で「経済的耐用年数」の評価方法まで悪質なものであるとされたのは非常に残念でした。
今回の報道を経て
不正融資問題を抱える金融機関はまだ他にも明るみになっていない銀行や信金・信組も多々あるでしょう。加えて反社会勢力との繋がりのあった西武信金の事実は非常に重く、根深い問題です。
しかし、それは不動産業界&金融機関が抱える一部の問題点です。業界全ての不動産・金融機関が悪いわけではありません。
西武信金の落合理事長、問題に関わった人たちの所為で、融資を受けていた投資家や、何の罪もない西武信金の職員の信頼・信用を失墜させてしまったことは非常に残念です。
今後の対応によって、一日も早い復帰を願います。