椙田(すぎた)です、
「内見の予約は入る。問い合わせも来る。なのに、なかなか申し込みが入らない」。空き家を貸し出している大家さんから、よく聞く悩みです。ボロ戸建てを自分で客付けしていると、こういうことはいくらでもあります。
客付けというのは、空いている部屋に入居者さんを見つけることです。内見というのは、入居を考えている人に、実際に部屋を見てもらうことです。
今日は、空き家の内見はあるのに決まらないときに、内見に来た人に何を聞くか、何から見直すかを、僕のやり方そのままでお話しします。
空き家の内見はあるのに決まらないとき、最初に家賃を下げない理由
この状態になったとき、僕が最初に家賃を下げることはありません。先に確かめるのは、募集に載せた写真で受けた印象と、現地で見た印象にズレがなかったか、という点です。
家賃を下げても、写真を見て期待した姿と、目の前の実物との差は埋まりません。理由が写真と実物のズレなら、安くしても、「やっぱり思っていたのと違う」という気持ちは残ります。しかも、家賃は一度下げると、元に戻しにくくなります。原因が分からないまま下げてしまうと、収支だけが苦しくなります。
もうひとつ、気をつけたいのが、内見の数そのものです。内見の数は、そのまま信じていいとは限りません。予約が入ったのに、当日そもそも来ない人がかなりいるからです。「内見がこれだけ入っているのに決まらない」と感じていても、実際に物件を見てくれた人の数は、思ったより少ないことがあります。
そのため、「決まらない」ときは、次の順番で見直します。
- 写真の印象と、実物の印象にズレがなかったかを聞く
- その内見が、どんな内見だったかを分けて数える
- 「ここを直せば決める」と言われたときの対応を決めておく
- 同じ指摘が何人から出たかで、直すかどうかを判断する
- そのうえで、募集の方法そのもの(仲介会社に任せるかどうか)を見直す
以下、順番に説明します。
まず確かめたいのは、写真と実物のズレ
僕がよく使っている募集の場所は、ジモティーです。ジモティーは、地域ごとの掲示板サイトで、もともとは不用品を無料で譲ったり、地域の人同士でやりとりしたりする使われ方が多いサービスです。ここでは、大家と入居希望者が直接やりとりをするので、僕は入居希望者さん本人に、直接話を聞きます。
仲介会社を通した場合は、担当者さんを通して聞くことになります。仲介会社というのは、大家と入居者の間に入って、部屋を紹介したり案内したりする不動産会社のことです。
どちらの場合も、聞くことは同じです。「現地を見て、写真やサイトで見ていた印象と違いましたか。それとも近かったですか」。この一言です。
決まらない原因は、写真の「盛りすぎ」であることが多い
この質問をするのは、写真と実物のズレで決まらないケースが、とても多いからです。よくあるのが、サイトに載せる写真をきれいに撮りすぎて、盛りすぎてしまうケースです。
写真がきれいなので、問い合わせは来ますし、内見の予約も入ります。ところが、実際に現物を見ると、思っていたよりボロい。これでは住めない、と判断されてしまいます。
この場合、内見の数が多いことが、かえって判断を狂わせます。「反響はあるのだから、物件は悪くないはずだ」と思ってしまうからです。でも、反響が多いのは写真の力で、決まらないのは現物とのズレのせい、ということがよくあります。
写真を盛るというのは、加工でごまかすことだけを指しません。たとえば、きれいに見える角度の写真ばかりを並べて、傷んでいる場所が1枚も写っていない。これも、見る側からすると「思っていたのと違う」の原因になります。
答えによって、見直す場所が変わる
ボロ戸建ては、家賃が安い代わりに、ある程度のボロさがある物件です。そのボロさが伝わらないまま内見に来てもらっても、現地でがっかりされてしまいます。
| 内見者の答え | 考えられること | 次にやること |
|---|---|---|
| 「違いました」 | 写真や説明文が、実物より良く見えている | 家賃より先に、次の募集の写真と説明文を実物に近づける |
| 「近かったです」 | 写真の問題ではない | 内見の受け方や、個別に気に入らなかった点を見ていく |
| 答えがもらえない | 来なかった、または連絡がつかない | 内見の中身(来た人・来なかった人)を分けて数える |
「違いました」という答えが返ってきたら、家賃より先に、次の募集の写真や説明文を実物に近づけます。逆に、「写真と近かったです」という答えなら、写真の問題ではありません。その場合は、内見そのものの受け方や、個別に気に入らなかった点を見ていきます。
写真そのものの撮り方については、別の記事で、撮る順番や1枚に入れる情報の考え方をまとめています。募集ページを見直すときは、合わせて確認してみてください。
内見の予約は、約半数が当日来ない前提で考える
ジモティー経由の場合、内見の予約が入っても、当日来ない、いわゆるドタキャンの人が約半数。僕は、そのくらいに考えています(これは僕の経験にもとづく感覚で、統計的な数字ではありません)。
ジモティーは、もともと無料で物をやりとりする場所として広まったサイトなので、気軽に問い合わせる人が多いです。そのぶん、約束をきちんと守らない人も、一定数います。もちろん、ちゃんとした人もたくさん利用しています。
申し込みや内見の希望が来ても、すぐには喜ばない
なので、僕はジモティーで申し込みや内見の希望が来ても、すぐには喜びません。淡々とやりとりを続けて、最後は電話で話します。電話でしっかり意思疎通ができる人だと確認できてから、現地の内見を受け付けています。
内見の際には、身分証明書を出してもらいます。どこの誰なのか、身元がはっきりしている人だと把握したうえで、物件を見てもらいます。空き家とはいえ、自分の大事な物件です。誰だか分からない人を入れるわけにはいきません。
なお、身分証明書の確認や情報の取り扱いについては、個人情報の扱いに関わるため、控えを取る場合は目的を伝え、必要以上に保管しないなど、慎重に扱ってください。
立ち会うか、セルフ内見か
決まりやすさを大きく左右するのは、大家である僕が現地に行くかどうかです。自分が行ける範囲の物件なら、なるべく現地に行って、入居希望者さんと顔を合わせて対応します。これをやると、僕の経験では、申し込みにつながる確率が格段に上がります。
一方で、遠くの物件だと、毎回立ち会うことはできません。その場合は、入居希望者さん自身に物件へ入ってもらう「セルフ内見」にすることもあります。セルフ内見というのは、大家や担当者が立ち会わずに、希望者さんだけで部屋を見てもらう方法です。
「決まらない」の中身を分けて数える
「内見はあるのに決まらない」と感じたときは、物件を疑う前に、その内見がどんな内見だったかを振り返ってみてください。次の4点を分けて数えるだけで、「決まらない」の中身が、かなり違って見えてきます。
| 数えること | 見えてくること |
|---|---|
| 予約だけで来なかった人は何人いたか | 実際に物件を見た人の数。内見の数は思ったより少ないかもしれない |
| 電話で話せていた人だったか | 意思疎通ができたうえで来た人か、勢いで予約した人か |
| 自分が立ち会えたか | 立ち会えた内見と、セルフ内見とで、申し込みの出方に差がないか |
| 写真の印象と比べて、違ったか、近かったか | 写真と実物のズレが原因かどうか |
また、ジモティーでは、物件の状態をよく分かっていないまま申し込んでくる人もいます。そういう人で決まらなかった場合は、僕はあまり気にしないようにしています。物件の状態を知ったうえで、それでも住みたいと思う人に来てもらえればよいからです。
「ここを直してくれたら決めます」と言われたとき
実際に来てくれて、物件を見たうえで、「この箇所だけ大家さんで直してくれたら、決めたいです」と言われることもあります。ここでの対応を間違えると、お金だけ出ていって、入居者さんは入らない、ということが起きます。
ボロいまま貸そうとすると、この交渉はよくあります。僕の実例では、キッチンに流し台がついていない物件で、「せめて流し台を付けてくれたら入居したい」と言われたことがありました。流し台というのは、キッチンで水を流すシンクの部分です。このときは、家主負担で、つまり大家である僕のお金で設置しました。
ただ、始めたばかりの頃には、交渉されて先に修繕したのに、結局入居がキャンセルになってしまった事例もありました。直すお金も手間もかけたのに、入居者さんは入らない。これがあってから、僕は先に修繕することをやめています。
先に申し込み、修繕は入居後
今のやり方は、入居の申し込みをしてもらうことを条件に、入居したあとに修繕する約束をする、という形です。先に申し込みをもらってから直す。この順番を逆にしないことが、ポイントです。
「直してくれたら決めます」という言葉は、まだ決めていない人の言葉です。申し込みという形で意思を示してもらってから動く。こうしておけば、直したのに入らない、という事態を避けやすくなります。
とはいえ、内見に来た人に言われたことを全部直していたら、お金がいくらあっても足りません。僕の物件は、DIY型賃貸借、つまり入居者さんが自分で手を入れて住むことを前提にした貸し方が多いので、直すのはあくまで入居者という前提で話をします。そのうえで、「大家である僕が直してもよいのですが、その場合は家賃を上げざるを得ません。どうしますか」と聞くようにしています。
この聞き方をすると、相手が本当に必要だと思っている修繕なのか、あったらいいな程度の要望なのかが、分かりやすくなります。
同じ指摘が何人から出たかで、直すかどうかを決める
僕は、内見に来た人の意見に一つ一つ対応して、条件をコロコロ変えることは、ほぼやっていません。1人に言われたところを直しても、次の人は別のところが気になるかもしれないからです。
見直すのは、何人もの人が同じ点を理由に決めなかった場合です。同じところで何度もつまずいているなら、物件の側に原因がある可能性が高くなります。そのときは、直すことも考えます。
申し込みに至らなかった人には、どこが気に入らなかったのかを聞くようにしています。そして、その点をなるべく潰すように、次の募集で修正します。ただし、家賃などの価格を変えるかどうかは、慎重に判断しています。
内見メモは、五つの見出しで残す
内見ごとにメモを付けておくと、この判断がしやすくなります。スマホのメモアプリを開いて、次の五つの見出しを書いてください。
| 見出し | 書くこと |
|---|---|
| 1. 内見日 | いつの内見か |
| 2. 来た人 | 性別、年齢、家族構成。厳密でなくてよく、「30代単身者」「40代ファミリー」程度で十分。名前もイニシャルで構わない |
| 3. 写真の印象と比べて | 違ったか、近かったか |
| 4. 気に入らなかった点 | 相手が言った言葉を、そのまま書く |
| 5. 自分の推測 | 相手が言っていない、自分の想像 |
4番目と5番目は、必ず分けて書く
特に大切なのが、「気に入らなかった点」と「自分の推測」を分けることです。たとえば、相手が「思ったより暗いですね」と言ったなら、それは4番目に書きます。一方、「たぶん家賃が高いと思われたんだろう」というのは、相手が言っていない、自分の想像です。これは5番目に書きます。
こうして分けておくと、何人かの内見が終わったあとに、4番目の欄だけを見比べられます。同じ言葉が何回出てきたか、正の字で数えてみてください。複数の人から同じ点が出ていれば、そこが見直す候補です。
逆に、1人しか言っていないことや、自分の推測の欄にしか出てこないことで、条件を変えないようにします。
「ここを直してくれたら決める」と言われた箇所も、4番目の欄に書いておきます。同じ箇所を何人もから言われているのか、1人だけなのかが分かれば、直すかどうか、直すなら申し込みを条件に入居後にするのか、という判断がしやすくなります。
ボロ戸建てを、仲介会社に任せない理由
ここまでは、自分で客付けをする場合を中心に書いてきました。ここで、仲介会社に任せることについても触れておきます。
ボロ戸建ての客付けで、僕は仲介会社を、あまり頼りにしていません。仲介会社としても、ボロ戸建てはできれば避けて、まともな物件で入居者さんを決めたいと考えているからです。これは、仲介会社が悪いという話ではなく、お互いの立場の違いの話です。
そういう相手にボロ戸建ての内見をお願いすると、僕のボロい物件は、他の物件に誘導するための「当て馬」にされてしまうことがあります。当て馬というのは、本命をよく見せるために比べられる役のことです。
まず僕のボロい物件を見せる。そのあとに、他の大家さんのきれいな物件を見せる。すると、入居希望者さんは当然、きれいなほうに気持ちが傾きます。そっちへ流れるように案内される。こういうことが、過去に結構ありました。
こうなると、内見の数はあるのに、自分の物件では決まらない、という状態が続きます。物件をいくら見直しても、比べられる相手がきれいな物件である限り、なかなか選ばれません。
なので、ボロ戸建てについては、仲介会社経由より、自分で客付けしたほうが決まりやすいと僕は考えていて、ほぼ自分で客付けしています。入居希望者さんに直接「写真の印象と違いましたか」と聞く。電話で話してから内見を受ける。現地で顔を合わせる。どれも、自分で客付けしているからできることです。
仲介会社に聞くなら、何を聞くか
もちろん、物件の場所や状況によっては、仲介会社に頼む場合もあるでしょう。その場合も、聞くことは同じです。担当者さんを通して、内見に来た人に次の点を聞いてもらってください。
- 写真やサイトで見ていた印象と、現地の印象は、違ったか、近かったか
- 気に入らなかった点は何か(言葉をそのまま教えてもらう)
- どんな人が来たか(年代や家族構成の大まかなところ)
- 他の物件も案内したか、どの物件と比べられたか
とくに最後の「他の物件も案内したか」は、聞きにくいかもしれません。ですが、これが分かると、比較されて負けているのか、物件そのものが合っていないのかが見えてきます。
家賃を安くしているのは、ボロさに目をつむってもらうため
僕の物件の基本は、大家である僕の条件に、入居者さんに合わせてもらうことです。そのぶん、家賃は相場より圧倒的に安く設定しています。少々の不具合やボロさには目をつむってもらう。これが、僕のボロ戸建ての貸し方です。
だから、1人に言われたからといって、すぐには直しませんし、家賃もすぐには下げません。写真を実物に近づけるのは、そのボロさを分かったうえで、それでも住みたいと思う人に来てもらうためです。
決まらないときに見直すのは、物件をきれいにすることではありません。安い家賃とボロさの釣り合いが、写真と説明文で、そのまま相手に伝わっているかどうかです。
家賃の決め方そのものについては、別の記事でまとめています。家賃を動かすのは、原因を確かめたあとの最後の手段にしてください。
内見はあるのに決まらない空き家の見直しチェック表
ここまでの内容を、見直しの順番として一覧にします。次に内見があった日に、上から順に確認してください。
| 順番 | 見直すこと | 具体的な行動 |
|---|---|---|
| 1 | 写真と実物のズレ | 内見者に「写真の印象と違いましたか」と聞く。違ったら次の募集で写真と説明文を直す |
| 2 | 内見の中身 | 予約だけで来なかった人、電話で話せた人、立ち会えたか、セルフ内見かを分けて数える |
| 3 | 来る前の確認 | 電話で話してから内見を受ける。内見の際は身分証明書を確認する |
| 4 | 修繕の頼まれ方 | 先に直さない。申し込みを条件に、入居後に直す約束にする |
| 5 | 指摘の数 | 内見メモの4番目の欄を見比べ、複数の人から同じ点が出たら見直す |
| 6 | 募集の方法 | 仲介会社に任せている場合、他の物件の比較対象になっていないか確かめる |
| 7 | 家賃 | 最後に、慎重に判断する |
よくある質問
内見はあるのに決まらないとき、家賃は下げたほうがいいですか?
最初に下げることはおすすめしません。まず、写真や説明文と実物にズレがなかったかを確かめてください。原因が写真と実物のズレなら、家賃を下げても、期待と実物の差は埋まりません。家賃は、原因を確かめたあとで、慎重に判断してください。
内見者に「ここを直してくれたら決めます」と言われたらどうすればいいですか?
先に直さず、入居の申し込みをしてもらうことを条件に、入居後に修繕する約束にします。僕は、先に修繕したのに入居がキャンセルになった経験があり、それ以来この順番を守っています。
ボロ戸建ては仲介会社に任せないほうがいいのですか?
一概には言えませんが、僕はほぼ自分で客付けしています。ボロ戸建ては、仲介会社にとって優先度が低くなりやすく、他の物件を引き立てる比較対象にされることがあったからです。物件の場所や、ご自身が現地に行けるかどうかによって、向き不向きがあります。
内見の予約が入っても来ない人が多いのはなぜですか?
ジモティーのように、気軽に問い合わせられるサービスでは、約束を守らない人も一定数います。僕の感覚では、予約の約半数が来ません(統計的な数字ではありません)。電話で話して、意思疎通ができることを確認してから内見を受けると、無駄足を減らせます。
セルフ内見はどんなときに使えますか?
遠くの物件で、毎回の立ち会いが難しいときに使うことがあります。大家や担当者が立ち会わず、希望者さんだけで部屋を見てもらう方法です。ただし、立ち会える範囲の物件なら、現地で顔を合わせたほうが申し込みにつながりやすいというのが、僕の経験です。
内見メモには何を書けばいいですか?
「内見日」「来た人」「写真の印象と比べて、違ったか、近かったか」「気に入らなかった点」「自分の推測」の五つです。特に、相手が言った言葉と、自分の推測を分けて書くことが大切です。
まとめ
内見はあるのに申し込みが入らないときに、僕が見直す順番をまとめます。
- 入居希望者さんに「写真の印象と、実物は違いましたか、近かったですか」と聞く。違ったなら、家賃より先に、次の募集の写真と説明文を実物に近づけます。
- その内見がどんな内見だったかを分けて数える。予約だけで来なかった人、電話で話せた人、自分が立ち会えたか、セルフ内見だったか。ジモティーでは予約の約半数が来ない前提で、電話で話し、内見の際に身分証明書を確認してから見てもらいます。
- 「ここを直せば決める」と言われても、先に直さない。入居の申し込みを条件に、入居後に直す約束をします。
- 1人の意見で条件をコロコロ変えない。何人もから同じ点が出たときに、直すことを考えます。家賃の変更は慎重に判断します。
そして、ボロ戸建ての場合、仲介会社に任せると、他の物件の当て馬にされることがあります。僕は、ほぼ自分で客付けをしています。
まずは今、スマホのメモを開いて、「内見日」「来た人」「写真の印象と違ったか、近かったか」「気に入らなかった点」「自分の推測」の五つの見出しを書いてください。次に内見があった日に、この五つを埋めるところから始められます。
貸す前の修繕を、どこまで、どれだけ安くやるか。そして、手に入れる前に、価値のない物件を見抜くこと。このあたりの具体的なやり方は、スクールでもお伝えしています。
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